白扇

仙客來遊雲外巓
神龍棲老洞中淵
雪如紈素煙如柄
白扇倒懸東海天

本作「白扇」は、石川丈山の漢詩「富士山」より名を拝し、その意境を映し取った作品です。

丈山は、富士の姿を「仙客が遊ぶ雲外の峰」とし、「神龍の棲む深淵」と詠みました。積雪を白絹に、立ちのぼる煙を扇の柄に見立て、やがて「白扇倒懸東海天」——白扇を逆さに懸けたような雄大な景として描き出しています。

ガラスの半透明のひろがりは雪と雲を思わせ、そこに宿る光は、山頂から天へと広がる霞を表現しています。木と金属の台座は、大地と時を支える根幹を象徴し、自然と人、詩と造形を結び合わせます。

小さな器に仮託されたのは、東海にそびえる富士の雄姿と、それを詩に託した丈山のまなざしです。白扇を手に取ることは、天空に広がる富士を掌に映すことでもあります。

作品名:白扇
材質:栂、パープルハート、ウエンジ、ガラス、真鍮、LED、他
制作年月:2023年11月
備考:使用電源・単三電池2本

Date : 2024-01-24 Wed.
Author : 加藤 渉
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