朧の面

月は、常に形を変えながらも、夜空に確かな存在を刻み続けます。
その姿は、満ち欠けによって輪郭を曖昧にし、私たちの心に「朧(おぼろ)」という不確かさと幻想を映し出します。

本作《朧の面》は、ガラスという透明で脆く、同時に強靭な素材を用いて、月の相貌をかたどりました。
人の顔を宿した月は、時間とともに揺らぐ感情や記憶を象徴しています。見る角度や光の加減によって、微笑にも憂いにも、あるいは怒りにも映り、明確な表情を与えることを拒みます。

「朧」とは、にじみ、ゆらぎ、曖昧であること。
その不確かさこそが、私たちが世界を生きるうえでの真実の姿ではないでしょうか。

  • 作品名:朧の面(おぼろのおもて)
  • 素材:ガラス
  • 寸法:H14.5×W10×D4cm
  • 重量:445g
  • 制作年:2025年9月
Date : 2025-09-20 Sat.
Author : 加藤 渉
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