透明なガラスに刻まれた隼の姿は、古代エジプトの天空神ホルスの化身です。その身体は光を透かしながらも、どこか影を抱き込み、存在の二面性を示しています。
古代エジプトにおいて、ホルスは「太陽」と「月」を両眼に宿し、昼と夜を見守る神とされました。本作は、その片方の眼差し──すなわち「片翳(かたかげ)」を象り、光と影、守護と不安、誕生と死のあわいに潜む人間の営みを映し出します。
硬質でありながら脆いガラスという素材は、信仰と祈りが持つ儚さをも暗示しています。